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 はじめての花展への出展。  いけばなを始めてはや五年。先生から「そろそろチャレンジしてみない?」と声をかけられ、チャレンジ席という見習いの者でも出展できる一番小さい席をとった。  壁際に並ぶ、少し位置の低い台への生け込みとなる。作品サイズは決まっているので、はみ出したりすると係員にその場で直すよう言われるらしい。  小さい席だと、作品サイズも小さくなる。はみ出したり、ぐらついたり、花がもたなくて枯れてしまったりしないように、家で下生けをした。  私はびびりだから、本番で慌ててしまわないように、何度も何度も練習した。当日も何が起きるか分からないから、花材も2倍の数を注文している。  トラブルが起きたのは、生け込みの前日だった。注文していた花屋さんからの電話。 「ごめんねぇ、夕べの嵐で花がダメになっちゃって。特にラナンキュラスが足りないらしいのよ。絶対に7本だけは……って言っておいたけど、それ以上は分からないって」 「は、はい……分かりました」  7本。それは私が出展作品に使うラナンキュラスの数ちょうどである。それはつまり、1本も失敗できないことを意味していた。
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