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「あら、今日も花型法なの?」
「あ、はい。しばらく復習したいんです」
花展から、半年が過ぎた。私の作品はチャレンジ賞――チャレンジ席のなかで一番評価された作品に贈与される賞――を受賞した。
だが、私はそれを素直に喜べなかった。
あれは盗作だ。先生がみんなのお手本で生けてくれた作品は、それは素晴らしいものだった。私はそれを真似しただけ。
先生の作品で鮮やかに光る宝石のようにアクセントとなっていた5本の薔薇を、ラナンキュラスに置き換えただけ。頭が真っ白になって何も思い浮かばなかった私は、先生のコピーをして賞をとったのだ。
「そう……」
先生は残念そうな顔をしていた。あの日以来、私は一度もレッスンで自由花を生けていない。
花型法で生けて、講評をもらって、先生のデモンストレーションと講義を受けて帰宅する。バケツに水と持ち帰った花材を入れ、新聞紙を数枚広げる。さて。
自由花に挑戦する。やっぱりダメ。これは3か月前の先生の真似。これは半年前の季刊誌に載ってた家元の作品の真似。これは一昨年のレッスンで私が生けたやつのただのアレンジ。
何を生けても、過去の作品に囚われる。これは文子の作品じゃないだろ、とあの日の折れたラナンキュラスが私を見つめる。
結局今日も、茎が短くなって使えなくなるまで行けなおしても納得いくようには生けられなかった。
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