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 花型法はいい。あれは誰もが練習する基本の型だし、花型法の作品は習作なので真似も何もない。練習するための型なのだから。安心して生けられる。  だが、自由花は違う。自由だからこそ、好きなように生けていいからこそ、個性が出る。何を生けても誰かの真似かアレンジになってしまう私には自分がないのか。私が花を生けることで表現できる何かはないのだろうか。  夜、布団に入るのが怖い。でも、いくら怖いと思っていても、いつの間にか寝落ちてしまう。  ぽっきり折れて茎5センチになったラナンキュラスが私の周りをぐるぐる回る。  私を使わずに、文子は何をした? 他人のアイデアを盗んで賞をとって満足か?  がばっと布団をめくって飛び起きる。午前3時半。これでも今日は少し眠れたほうだ。  怖い。怖い。怖い。  溺れて水のなかを彷徨っているかのように、何を生けても先が見えない。前も後ろも、どこに進むべきなのかも分からない。  汗だくのパジャマを脱いで、シャワーを浴びる。  分かっている。技術は盗んで身に着けるものだと。他人の真似をすることは悪いことじゃない。だけど、それは技術を身に着けるときの話であって、自分の作品として世に出すときじゃないだろう。  ふと見上げた鏡の中から、あのラナンキュラスが私を見つめていた。
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