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「文子さん、次回のレッスンだけど、一回お休みしたらどうかしら?」 「へっ?」  先生の方から休みを指定することなんていままでなかったし、ほかの人でも聞いたことがない。 「来月の月謝は半額にしておくから。代わりに、これを私の代わりに見に行ってほしいの。チケットもらったんだけれど、私はレッスンがあるから」  先生にもらったのは、フラワーアレンジメントの展覧会のチケットだった。そこに書かれた会場を見て、身体が固くなる。 「行っておいで」 「はい……」  有無を言わせない先生ではないけれど、何故だか断れなかった。  当日、いつものレッスンに行くときと同じ時刻に家を出た。展覧会は朝からやっているけれど、なんとなく習慣に従っておく。  だけど、行き先は少し違う。レッスンのときよりも二駅先で電車を降りて、駅に隣接するデパートの催事場へと向かう。エレベーターに乗りながら、息が苦しくなった。ここは、半年前私が出展した花展の行われた会場だ。
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