奮い立たせ

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奮い立たせ

朝から嵐のような雨。 昨夜は一睡もできなかった。 ゆかりもそうだったようで、二人でずる休み。 警察からも連絡があるかもしれないという事で、園のスタッフの人たちに連絡をしてくれたのは、勇仁さん。 昨夜強盗が押し入ったため、と説明してくれたらしい。 私がゆかりを抱きしめ、その私を勇仁さんが抱きしめてくれて朝になった。 しおりは、「お姉ちゃんだけズルい~」と駄々を捏ねていたけれど、勇仁さんが何とか説得をして学校に送ってくれた。 「片付けなきゃね」 さっと片付けてはいたものの、まだ散らかったままの所もある。 しおりが起きて来て怪我をしないようにと、勇仁さんが割れたグラスや花瓶などは掃除してくれたのだが。 ゆかりにあの男の事を少しだけ話した。 酷い扱いを受けたとだけ言ったけれど、ゆかりの年齢だとなんとなくそうだという事は判るかもしれない。 けれど、人生にはそういう自分の望まないこともあるのだと、解っていて欲しかった。 ゆかりは普通の子と比べるとそういう事もしっかりと判ってはいると思うが、 永い人生の中で、親の知り得ない環境で生きていかなければいけない時間の方が多い。そっちの方が心配だから。 頑張ったんだね。 独りで戦ったんだね。 強かったね。 偉かったね。 ゆかりにそう言われると、昨夜はあの当時に戻ってしまったかと思えた自分が、永い時間を経て今を生きているのだと実感した。もうずっと昔の事だと。 ゆかりに世の中の不条理を教えたつもりが、私の方が助けられたようだ。
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