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お通夜の夜遅くに大野さんは来てくれた。
平日なのに、大変なお仕事なのに、明日の葬儀が終わるまで居て下さるという。
その頃にはもう、お母さんは棺の中で眠っていて、
また、更に遠くに行ってしまった様な気がして、寂しさが増す。
前日に近くの量販店で買った喪服がかなりブカブカで、とても情けない。
あまり選べるほど商品が無かったのもあるし、サイズだってそれほど無くて。
小柄という事が小さい頃からのコンプレックスだった。
高いヒールは好んで履くし、出来るだけ生地にボリュームのあるような素材の服を選んでた。
だけど、喪服にはそんな選択肢はなくて。
特に田舎の量販店だから、諦めてはいたけれど、やはり大野さんにそんな不格好な姿を見られては恥ずかしさばかりを感じていた。
そんな事を想ってる場合じゃないのはよく解ってはいるのだけれど、
どこか、感覚がおかしくて。ずっと。
「大丈夫ですか?
大変でしたね・・・何と言っていいのか・・・」
私は全くへんな事を考えているのに、優しい言葉を掛けて下さるあなたって・・・
そうね、ちゃんと送ってあげなきゃいけない。
今日がお母さんの顔を見れる最期の日だから。
気を引き締める。
思考逃避している場合じゃない。
「お忙しい所、ありがとうございます。
急な事だったので、どうしていいのか判らず、あの・・・」
こんな時、どんな風に言葉を選べばいいのか、頭の中がごちゃごちゃ。
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