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「あれ、元気が出た?」
お昼前に勇仁さんは戻って来た。
会長が戻ってやれと言ってくれたそうだ。
ゆかりと私のことに対しては、過保護なんだそうだ。
ありがたい事。
「外でランチでもして、しおりを迎えに行こう。
しおりも喜ぶぞ?朝は不機嫌だったから。
水族館でも行こう。みんなで」
お仕事を休んでいるのにいいのかしら。それにゆかりは眠いんじゃないの?
そんな事を言うと、
「お母さんこそ眠くないの?私は若いから全然大丈夫」
なんて言い返された。
勇仁さんの方に警察からの連絡があったそうだ。
錯乱していて昨夜は話を聞ける状態ではなかったようだが、朝になるとおとなしく淡々と話を始めたそうだ。
予想通り、生活に困り仕事を求めて都会に出てきたはいいけれど、こんな歳だしロクな仕事に在り付けず、賄い付きの定食屋とかパチンコ屋とか、日雇い労働とか清掃とか旗振りとか、転々として・・・
一緒に流れて来た女性がいたようだ。流れてきた頃は30代でまだスナックなどで働けてはいたけれど、40を過ぎると夜の店もロクな働き口も無く、相当生活に困窮するようになって。
そんな時、私を見かけたらしい。大人にはなっていたがすぐにわかったと。
小奇麗な格好をして颯爽と楽し気に子供たちを連れてこんな立派なマンションに入って行く私を見て、
そうだ、コイツにカネヅルになってもらおうと考えたそうだ。
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