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「あんた、とんでもない人を敵に回したな」
と伝えると何を言われたのかわからない様子だったと。
かなり上の上層部から厳しく言われたらしい。
朝会長に話をしたから、警察の方に手を回したのじゃないかと。
明日の朝には勇仁さんが警察に出向き、特別に男と話をさせてもらう事にしていると。
もう二度と現れる事は無いよ。
ちゃんと話をしてくる。
今度顔を見せたらどうなるか、話して聞かせる。
そんな事を言っていた。
ああ・・・どうなるんだろう・・・ちょっと怖い。
でも、いい気味。二度とあの顔は見たくない。できればこの世から消えて欲しいくらい。
黒い私がちょっとだけ顔を出す。
「じゃあ、支度をしましょうか。
水族館よ?おしゃれしなきゃ!」
せっかくのずる休み。なんとか気持ちを奮い立たせ子供たちと愉しむことにした。ゆかりはもちろん当事者だけど、しおりにまで不安な想いをさせてしまっているはずだから。
サヨナラしたつもりで、どこかにずっと隠し持っていた恐怖や苦しみや憎しみと、
やっと決別できるような気がする。
お義母様には急に勇仁さんが半休を取れたので、みんなで水族館に行くことを報告した。
「あら・・・勇仁、なにか失敗でもしたのかしら。
謹慎とかじゃないんでしょうね」
と心配されていた。
親にとって、子供はいくつになっても子供なのだろう。
失敗なんて・・・誰にだったある。大人になってもどんなに立派になっても。
私なんて、まだ子供の頃の事で勇仁さんに心配ばかり掛けているというのだから。
「大丈夫ですよ。そんなんじゃないです。
本当にスケジュールが突然空いてしまったらしいです。
そういう事もあまりないので、子供たちと愉しむことにしただけです」
取り繕う嘘も自然に出てくる。
大人になるという事を、こんなふうに証明したくはないのだけれど。
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