奮い立たせ

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「お父さん、居なくなっちゃった・・・ゴメンね?」 離婚して父が出て行った時の事。 「お父さんの事は好きだけど、お母さんが独りで寂しい方がもっとイヤ」 「ありがとうね・・・ ユキちゃんが困らないように、お母さんもっと働くからね? だけど、一緒に居られる時間が減っちゃうかもしれないの。 帰りが遅くなったりね?お休みの日もお仕事に行かなきゃいけなかったりね・・・」 「ユキ、独りでも大丈夫だよ? リカちゃんとお留守番する。それに、お隣のおばちゃんが居るし」 いつも遊んでいたお人形とはお友達だと思っていた。 「お隣のおばちゃんにもお願いして置くね?時々様子を見てねって。 ホントに大丈夫?」 「大丈夫、ダイジョウブ!」 そんな風に啖呵を切ったのは私だった。 でも、毎日暗くなっても独りで、寂しくて・・・ お父さんがいた頃はお母さん、早く帰って来て、 一緒にカレーを作ったり一緒にお風呂に入ったり・・・こんな寂しくなかったのに・・・ そんな想いから、母にお父さんの事ばかり言った様な気がする。 お父さんが居たら、って。 辛かったと思う。 独りで立派に、と考えていた母にとっては、責められているように思えたのだと。 特に血の繋がった親子ではないのだから、余計にいろんなことを考えてしまったのだと。
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