1―始まり―

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何も言わずとも気付いたらしく、説明を始めた。 「ああ、それは特注の腕時計です。世界に一つしかないんですよ」 「そうなのか?」 「ええ、何せオーダーメイドですから。作られたのは日本でして、その腕時計一本を残し、お店が火事で全焼…」 「だーっ! この店にはそういういわく付きの代物しかないのか!」 「はい、そうです」 「…え?」 魅弦は笑顔で肯定した。 「この店には、そういういわく付きの商品しか置いていません」 きっぱりと言われ、真名の足は出口に向かった。 「邪魔したな」 「おや、お気に召しませんでした?」 「そういう趣味はない。ついでに言うと、買う金も無い」     
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