望むうそ

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「…今日はエイプリルフールだからな!」 腕を放し、彼は顔をそむけた。 「あっああ、そうですね」 「いつも苦労をかけている副会長に、礼の一つもしようと思ってな」 …そう言う彼の顔は、笑っているのに泣きそうだ。 体も小刻みに震えているのが、見ているだけでも分かる。 僕は簡単に言える言葉だけども、彼にとってはこんなに苦痛を与えてしまう言葉だったのか…。 反省しなければ、な。 ここまで彼を追い込んだのは他でもない。 僕なのだから…。 「…ありがとうございます。おかげで残りの学生生活も楽しく過ごせそうですよ」 「そっそっか」 「ええ。…用事は以上ですか?」 「あっああ…」 しばしの沈黙の後、僕は音もなくため息を吐いた。 「それでは、次にお会いするのは生徒会の会議ですね。あまり遅くならないうちに帰ってくださいね」 「おいっ! 待てよ!」 踵を返し、帰ろうとした僕の手を、彼が掴んだ。 「はい、何でしょう?」 「何でしょうって…。他に言うこと、無いのかよ? お前が望んでいた言葉だろう?」 確かに僕は、彼に「好きだ」と言ってほしかった。 ウソでも良いからと。 …でも結局、彼に辛い思いをさせただけにとどまってしまったことを、後悔していた。 「ウソでも嬉しかったですよ? ただちょっとビックリしただけです。本当に願いを聞き入れてくださるとは思わなかったもので…」 だけど言ってくれた彼の心は、嬉しかった。 だから上手くは笑えないけれど、笑みを浮かべる。 「だっだから…。俺が言ったことに、お前はどう反応するんだよ?」 「えっ? …えっと…」 礼は言った。リアクションも取った。 後は…。
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