俺の主人

4/11
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
車が入ると、幹部達が玄関で待っているのが見えた。 俺は先に降りて、彼のドアを開け、カバンを渡す。 「いよっ、おはようさん」 「おはようございます、社長」 社員達が次々と頭を下げ、挨拶をする中、俺は部下の1人に車のキーを渡した。 駐車場へはいつもの者に入れてもらう。 そして彼の後を歩きながらも、周囲に気を回す。 会社の中で何か不穏な動きがないか、感じ取る為に。  チリッ… わずかに肌が反応した。 彼の顔を見ると、俺を見て笑った。 彼も感じ取ったのだろう。 会社に流れる不穏な空気を。 ビルの最上階に、社長室がある。 社長室で2人っきりになるなり、彼は俺を見た。 「ずいぶん、怪しいのがいるんだな」 「検討はついていますので、ご安心を」 「まったく…。お前はよくやってくれるよ」 彼はカバンをソファに置き、社長用のイスに座った。 「で? いつ頃終わりそうなんだ?」 「今日中には必ず。なのであなたにはちゃんとスケジュールをこなしてもらわないと、困ります」 「なるほど。どうりで過密スケジュールなワケだ」 彼は肩を竦めると、俺の目を真っ直ぐに見て笑った。 「でもお前はちゃんとオレを守ってくれるんだろう?」 「当然です。俺以外に、誰があなたを全身全霊全力で守れると?」 そう言いつつ、メガネの位置を指で直した。 「そりゃ頼もしい」 彼の眼に宿る光は、決して良い輝きではない。 俺の言っている意味を、よく理解している眼だ。 「あなたのことは、俺が必ず守ります。誰にも傷付けさせませんし、殺されもしません」 「…頼りにしているぜ?」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!