俺の主人

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だがもう、今夜以降、それも終わる。 気合を入れなおし、フロをあがった。 再びスーツに着替え、部屋に戻ると、彼はビール片手に夜景を見ていた。 「…キレイだな、ここ。今日はここに泊まらないのか?」 「お望みとあらば。しかしチェックインは朝の10時ですし、会社からは少し遠いので、お昼ギリギリまでは眠れませんよ?」 「わーお★ それはきついなぁ」 着替えの為に、わざわざスイートルームをとった。 しかもツイン。このまま泊まることも可能だが…。 「泊まる前に、あなたには本日最後の仕事をしてもらいます」 メガネをかけなおし、俺は真面目な顔になった。 「分かってるって」 彼はビールを飲み干し、余裕の笑みを浮かべた。 「それじゃ、行きましょうか?」 「はい。あなたの為に」 車を動かし、着いた先は我が社だった。 しかし車は近くの駐車場に泊めて、彼と2人、裏口から会社の中に入る。 会社の中にはまだ、仕事をしている人間はいる。 この本社では主にデザイナー達が商品開発をし、そして販売・管理を行う。 製造は別の所で行っている為、会社の重要なことはここで管理されている。 それこそ新たな宝飾のデザイン画の管理なども。 俺と社長は地下2階に階段で下りた。 そして一つの扉が少し開いていることに気付く。 彼に視線を向けると、人差し指を立て、唇に当てていた。 俺は頷き、彼の後に続く。 開いた扉の向こうから、光が漏れている。 「こんな夜遅くまで残業とは、頑張るなぁ」 彼は低く呟き、ドアノブに手をかけた。
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