僕いがい、すべて溶けていく

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  気がつくと知らない場所にいた。  そこは、どう考えても現実感がなく、おとぎの国のような不思議な場所だった。  というのも、すべての景色がお菓子でできていたんだ。  道と思える、そこは、たぶん、ベースはマシュマロで青い色の線はラムネっぽい。赤は確実に果汁グミだ。  遠くに見えるのは城。だが、あまりにもカラフルでリアルじゃない。あの壁は、たぶん、ウェハースだ。その上にチョコが塗りたくってある。ホワイトチョコだろう。  甘ったるい臭いにむせそうになる。  目の前に、でかい骸骨が転がっていた。  ガムでできている。  その骸骨の上に、小さな女の子が座っていたので声をかけてみた。 「こんにちわ」 すると、びっくりしたように顔を上げ困った顔をした。 「こんにちわ」ともう一度声をかける。  少女は立ち上がり、その飴細工のフレアスカートが、がさっと縦に揺れた。 「あなたね、侵入者というのは?」 「何がだい?」 「お城の人たちが、あなたのことを探していたわ。見つけたら殺すって言ってたわ。ここから早く立ち去った方がいい」 「どうして、殺すんだい」 「侵入者だからよ。ここの人たちとは違うからよ」 「違うと排除するのかい?」 「そんなの当たり前じゃないの」と呟くと少女は大きなケーキの横を通り抜けて、どこかに立ち去ってしまった。   理不尽だ と思った。自分たちと違うからって殺すって、それはあまりにも乱暴すぎる。  できることなら、こんな世界から抜け出したい。  しかし、どうすればいいかはわからない。  やってきたらしい方向は、何故か道が溶けてなくなっていた。  戻るに戻れない状況のようだ。  とりあえず、僕は城に向かって歩いた。  マシュマロの道は、ふわふわで歩いているというよりも、トランポリンの上を飛んでいる感覚だった。  周囲の風景はなごやかで、刺客が待ち受けているとは思えなかった。  目の前の建物の看板をへし折り食べてみる。  口の中に、甘いチョコレートが広がっていくのがわかった。  カカオの量の少ない安物だ。  
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