ご主人と俺

2/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
すき。 好意を伝えられる言葉は、どうやらこの二文字らしい。余りにも短くて、本当にこれだけで相手に気持ちが伝えられるのか疑問がある。 でも、ご主人が僕に毎日言う言葉の一つだし、テレビの中の雄の人間がご主人にこれを言うと、たちまち真っ赤になって「キャー!」だの「私もー!」だの、テンションが高くなるからそうなんだろう。 全く、人間って不思議だ。 お気に入りの丸いピンク色のクッションに座って、長い尻尾をゆらりと遊ばせた。 背の低いテーブルから、美味しそうな匂いが鼻を刺激する。ご主人がキッチンからここまで往復する度にその匂いが濃くなって、さっきカリカリを食べたばかりにも関わらず腹が減ってる錯覚に陥ってきた。少しばかり気怠い身体を起こして、テーブルに両前足を乗せると、頭を撫でられる。 「クロはご飯食べたでしょ。」 そのまま軽い力でグイッと押されて、再びクッションに戻された。俺を飼い始めて約一年。こいつ、かなり猫の扱いに慣れてきたな。俺を道端で拾った時はずっと右往左往してたくせに。 なぁ、ご主人。しょっぱいのは体に毒だっていつも俺に言ってるよな?お前が食ってるそれら、とってもしょっぱい匂いがするぜ?
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!