ホワイトデーのお返しは鉄拳だった。

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 杉本にとってそれは練習だった。高校OBのプロ選手がひょんなことから彼とスパーリングをすることになった。そしてその戦いは一瞬で終わった。 「君は知っていたのか?」  一人で頭を抱えている彼の声を、玲子は恋しいとすら思った。 「俺は、あんな・・・」  玲子は彼の体を抱き寄せた。  迫る拳が玲子の首筋に触れた。  更に深くあの日の事を思い出す。何もできずに打ちのめされた彼の瞳を。    ここで説明せねばなるまい!  玲子の拳風の真髄は投げである!  彼女に不用意な接触を許せば、例えば今さっき無傷でボクシングプロ選手を瞬殺した規格外のボクサーであったとしても、翔ぶ! 「?!」 「『知っていた』?何を?貴方がもはやプロを凌駕している事?もはやこれ以上は強すぎて、この高校ボクシング界に居場所がないこと?」  更衣室のロッカーに叩きつけられた。 「私が知っているのは、貴方が今ちょうど、食べごろだという事よ!」  足刀は杉本の頭部を捉えた。常人であれば確実に意識を失う。 「20点。まあ顔が好みだからおまけして25点ね」  玲子は肩をすくめてロッカーに後にする。 「待・・・・・・て・・・・・・」  よろけながらロッカーから杉本が立ち上がる。拳を持ち上げ、創だらけの視線は玲子に向けた。 「闘志だけは100点をあげようかしら?」     
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