ホワイトデーのお返しは鉄拳だった。

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 玲子は杉本の真っ直ぐな瞳が好みなのだと再び自覚し、構え、手招きした。  そんな瞳を打ちのめすことが、彼女の生き甲斐ですらあるのだ!  そして今!  首元をかすった拳から玲子は思いを馳せる。  彼は、杉本はこのホワイトデーにお返しをするためにどれ程の修練を積んだのか。 「だが遠い」  肩と右頬で腕を挟み、左手を肘に右手を脇に添える。右足は既に一歩踏み出し杉本の両足に絡んでいる。 「!」  玲子は絡めた両腕をほどき距離をとる。 「市村が・・・技を離した・・・?」  群衆がざわめく。 「いや、市村のあの判断は正しい」 「!?」 「杉本の左拳はあのままなら確実に市村の顎を砕いていた。右腕を囮に市村を倒すつもりだったんだ。市村対策は万全ということか」 「だがそこまでして市村を捉えることは出来なかった。もうネタは割れちまっている。市村、あいつは本当にバケモノだな」  そんな群衆の声を無視して、玲子は体勢を立て直す。 「50点。いえ」  玲子の頬に口紅のような赤い裂傷。 「60点」  玲子は笑った。
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