金色の竜フルック

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僕らは、何をしに行ったのかもすっかり忘れて、ラチの服についた泥を払ってやりながら、山を下りた。  大人たちは、僕らを見つけて思い切り抱きしめた。フルックに連れ去れられたと思ったんだって。後で聞いたことによると、あの男を真ん中に計画を立てていたら、突然空が明るくまぶしくて何も見えなくなって、空から声が振ってきた。みんな口をそろえて言うことには、「村から出ていけ」って響いたそうだ。 それを聞いたあの男、真っ青になって荷物をかかえて逃げて行ったらしい。そんな声、僕らには聞こえなかったけど、みんなが言うのだからそうなのかもしれない。  その日から、少なくとも今日まで、フルックは二度と起きたことはない。ラチも池のそばでは歌わないようにしているらしい。 だけど、今はお母さんになったラチが、赤ん坊を寝かしつけようとうたっていると、時々山がぐらりと揺れることはあるから、フルックは夢の中でラチの歌を聴いているのかもしれないね。
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