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しかし、成都へ再び帰還する事叶わず、呉との国境付近の白帝城にて、病に没した。
魏延はその間、この蜀漢を守り通さねばならなかった。必ずこの敗北を見て、魏は動こうとする。国内でも大小様々な反乱が勃発するかもしれない。その全てに目を光らせ、劉備は必ず戻ってくると、そう信じて国を守り通した。
しかし、魏延が守り通した成都へ帰還した劉備は、棺の中であった。
「魏延大将軍、丞相がお呼びです」
「分かった」
英雄の死から、十年。未だ自分は、夢の途中にある。
自分こそが、劉備の夢を引き継いだのだと、そう思っていた。直接の言葉こそ交わすことは出来なかったが、死の間際、劉備は自らの夢を自分に託したのだと。だからこそ、漢中を任されたのだ、と。
「諸葛丞相、魏延が参りました」
「あぁ、入ってくれ」
促されるままに幕舎に入ると、そこには壮年の、あまりに細い腕をした男が座っている。
諸葛亮。現在の蜀漢の、行政における最高位の人物である。また、死の際の劉備より直接、後事を託された男でもあった。
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