憧れ

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 印象としては、まさに皇帝を補佐するに足る才を持った文官。この諸葛亮が居たからこそ、蜀は劉備の起こした大敗から、僅かな期間で国力を回復させる事が出来たのだ。歳も、魏延とさほど変わらない。 「そう固くならずとも良い、大将軍。軍中における実権は、貴方と私はさほど変わらないのだから。何より同郷で、同僚でもある」 「皮肉ですか?大将軍の位に加え、丞相司馬の位も、私に与えられたのは丞相でございましょう」  魏延は蜀の軍事における最高位にまで昇進していた。しかし、その位には丞相司馬という、諸葛亮の幕僚となるような位も加えられた。  今現在、蜀軍は、魏を討伐する為の「北伐」の最中である。今回で、五度目の出征。本来なら軍事における総指揮官は魏延であるはずが、諸葛亮自ら指揮を執ることになっているせいで、常に難しい立ち位置を強いられていた。  諸葛亮も、魏延も、自分こそが劉備の夢を継いだと思っている。実力こそ認めてはいるが、思いは譲れず、どうもお互いの事を好きになれなかった。 「何故、私をお呼びになったのでしょうか」  見る度に、諸葛亮の体は細くなっていく。それでも、その目には力強い意志が灯っている。
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