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「陽太、頼むから、家に入れて?」 懇願するように、鷹城は言い募る。 「君が何を心配してるのか、わかってるから」 そのことを話に来た。 だから。 そこまで言われては、入れないわけにはいかなかった。 陽太は震える指で、エントランスのロックを解除する。 玄関のドアを開け、そっと外を覗き見る。 通路には誰もいない。 ネットで騒がれたぐらいで、過剰反応し過ぎたのだろうか。 結局誰も、鷹城がセージだと特定できなかったのか。 そう思っていると、エレベーターホールのほうから、見慣れた男がほとんど走り出さんばかりの勢いでこちらにやってくるのが見えた。 「陽太」 彼は、陽太を家の中に押し込むようにしてドアを閉め、それから力一杯抱き締めた。 「そんなに目を腫らして、ああ、そんな顔も可愛いけど、でも」 その唇が、瞼に触れる。 「君をそんなに泣かせてしまうなんて、俺は恋人失格だな」 陽太の喉がヒクッと鳴った。 そんなつもりはなかったのに、その匂いに包まれた途端、込み上げてくる何かを我慢できなかった。 「たかじょ…さん」 「ああ、もう大丈夫だから、泣くな」 違うな…我慢しねえでいいから泣いていい、か? 鷹城の手が、優しく優しく背中を撫でてくれる。 「ネットのこと、心配してくれたんだな?」 俺は、正体がバレるのも、何を言われるのも平気だから。 何も心配しなくていい。 君のことも晒し者にならねえように、ちゃんと守るから。 「君の願いならなんでも叶えてあげたいけど、俺から離れるのだけは絶対ダメ…それだけは、叶えてあげられない」 だって、こんなに泣いてる。 陽太も本当は俺と離れたくないって、知ってるから。 ホントは、俺も、離れたくない、です。 しゃくりあげながらキレギレにそう言う陽太を、鷹城は落ち着くまでずっと、背中をさすりながら抱き締めてくれていた。
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