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「君、この辺の子?だよな、犬の散歩してんだもんな…」
そのひとは、ニッコリ笑った。
やたらと色の濃いサングラスのせいで口元しか見えないし、鼻と鼻の下は、鼻をかみすぎたせいで真っ赤になっているけれども、かなりのイケメンぽい。
「明日もこの時間に散歩してる?」
「雨じゃなければ、たぶん…」
見知らぬ男にそんなことを聞かれたら、なんとなく警戒するのは、このご時世当たり前だろう。
少し表情を固くして語尾を濁す陽太に、そのひとは。
「あー、ごめんごめん、知らねえオッサンにそんなこと聞かれたら警戒するよな、そりゃそうだわ」
そうじゃなくて、ティッシュのお礼したいだけなんだよ、と彼は言い。
「俺んち、この近くだからさ…つか、ホントもう鼻が限界なんだわ、だから明日改めて」
「いや、あの、ティッシュごときでお礼とか大丈夫なんで」
「そーゆーわけにはいかねえって!もう、君、俺のマジ恩人なのよ!神なわけ!」
だから、明日、この時間に待ってる。
そう言って、いやあの、と困惑する陽太が断る隙を与えず、突然、土手を駆け上がって行ってしまう。
「じゃ、また明日ね~、俺の神サマ!」
川沿いを一体どこから歩いてきたのかわからないけれど。
夜通し歩いてた割には元気だな。
陽太は、あっけに取られてそう思った。
が、はたと明日の約束を断り損ねたことに気づく。
ええっ?俺、明日…やっぱ来なきゃダメかな?
あのひと、なんかヤバいひとじゃないよね?
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