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「夏のフェスで、アオイがめっちゃこっち見てたんだけど、視線の先によく見たらアオイにすげえ似てるイケメンいたから気になってた」 とコメントが続いている。 「恋人のほうは背がちっちゃくて小柄だったからどんなコかはよくわかんなかったけど、セージっぽいイケメンが熱心に話しかけてる感じで、明らか溺愛してるふうだった」 この写真とコメントには、かなりの反応があるようだった。 その中に、恐れていたコメントが紛れていたのを、陽太は見つけてしまう。 「このひと、都立A高校の正門前に誰かを迎えに来てたの見た」 「マジか!なら彼女って現役女子高生?」 「犯罪じゃね?」 「ロリかよ」 「女子高生なら流出やりかねん」 「コワッ」 こんな調子だ。 相手が陽太だというのも、あっという間に広まってしまうかもしれない。 自分もこの騒動にどんな巻き込まれ方をされるかわからないから怖い。 だけど、高校生男子と付き合ってるからって、鷹城が犯罪者扱いされてしまうことが、もっと怖い。 陽太は、震える指で、そのまま鷹城に電話をかけた。 「どうした?もうさみしくなった?」 鷹城はワンコールも鳴らさずにすぐに出て、そんなことを言う。 「今別れたばっかなのに、可愛いな、君はホントに」 その甘い声はいつもと何も変わらない。 陽太の耳に心地よく響く。 唐突に陽太は、その声を失いたくない、と切に願っている自分に気づいた。 いつかは離れていくひと。 そう覚悟を決めていたはずなのに。 今はもう、そのひとをどうしてもどうしても失いたくない。 こんなに好きになってしまったら、きっともう、そのひとを失うときには、身体の半分をもがれるぐらい苦しくて悲しくて辛いだろう。 こんなに好きにさせるなんて、酷い(ひと)だ。 「鷹城さん」 陽太は、声を振り絞って、そのひとの名を呼んだ。 「陽太?何かあったのか?」 電話の向こうのそのひとは、陽太の様子がおかしいことを敏感に察知したようだ。 「そっちに行こうか?」 心配そうにそう言われ、陽太は次の言葉を紡ぐのを躊躇った。 でも。 「…それは、ダメ、です」 彼は、震える声で続ける。 「俺とは、しばらく会わないで下さい」 「陽太?」 「ごめんなさい」
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