獲物

6/10
前へ
/177ページ
次へ
「まだ残っている生徒達もいます。ここで話していては、少し目立ってしまいますよ」 いつの間にかそばに来ていた緒方が、オヤジに声を掛ける。 「・・・ああ、そうだね。近いうちに連絡するよ、ミナトくん」 真面目クンの父親が柊さんの肩を撫でた後に、その場を去ろうと歩き出した時 「私達も行きましょう」 緒方は わざとらしくそう言うと、振り返ったオヤジに見せつけるように、柊さんの肩を抱いて歩き出す。 「ほう・・・教師と父兄がそういった関係はまずいんじゃないのか?」 「あなたにも、ご家族に知られたくないマズイ過去があるんじゃないですか?ここは見過ごして頂けませんか?」 オヤジと緒方はお互いを牽制する様に視線をぶつけ合う。 「失礼するよ」 先に視線を逸らしたのはオヤジの方だった。 オヤジの姿が見えなくなって、ようやく緒方が柊さんから離れる。 「ごめん、ミナト。余計な事したかな?」 「・・・いえ。助かりました。実は、あの人の事、覚えていなくて・・・昔の話を出されて困ってたんです」 「そうか。役に立てたなら良かった」 柊さんと緒方の会話を、俺は何もできずに聞いているしか無かった。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1804人が本棚に入れています
本棚に追加