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大人は、狡い。
俺がしたくても出来ない事を、簡単にやってのける。
俺が必死で手に入れたものを、簡単に奪っていく力を持ってる。
「夏もありがとな。俺が遅いから心配してくれたんだろ?」
「・・・」
微笑む柊さんに、目も合わせられない。
心配、なんかしてない。柊さんを緒方に盗られるかもしれないって思って・・・ただの独占欲だけで走り出した。何の考えも無しに・・・。
結果、柊さんを助けた緒方に嫉妬するハメになるなんて。情けな過ぎて、自分が嫌になる。
「柏木は、お父さんがほんとに好きなんだな」
ポン、と緒方に背中を軽く叩かれて、子供扱いされている自分がもっと嫌になった。
「勢い余って父親の方も殴るんじゃないかってヒヤヒヤしたぞ?・・・若いうちにしか無茶できないとはいえ、これ以上、お父さんに迷惑かけるなよ?」
「うるせぇな緒方!早く学校戻れよ!」
「夏!先生に向かってなんて口きくんだよ!・・・すみません、緒方先生」
「ははは、気にしてませんよ。柏木達が好き放題できるのはガキのうちだけですから」
ムカつく・・・緒方も、柊さんも、あのオヤジも。
若いうちにしかできない無茶って何だよ。
柊さんへの気持ちを好き放題ぶちまけて、俺のもんだって言えばいいのか?
言えば柊さんに迷惑がかかるに決まってる。
俺が未成年で柊さんが成人ってだけで、この人は犯罪者扱いされるに違いない。
淫行目的で養子にした、って世間から罵られるかもしれない。
ガキだからこそ言えない事だってある。
大人は、残酷だ。
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