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「座りなさい」
丸いテーブルを囲む大きな半円形のソファに手を置いた長澤に、横に座るように促される。
俺はソファの中央に座る彼から離れた端の方に腰を下ろす。
「ふん、経営者にもなると随分ふてぶてしくなるもんだな。必死で男の股ぐらに縋りついていた頃の君が懐かしい」
「思い出話をしに来たのではありませんよね。さっさと本題に入りませんか?」
「まあ待ちなさい。せっかくの運命の再会だったんだ。時間を有意義に使いたい」
客との再会が運命だというなら、俺には数え切れないくらいの運命がある。・・・そんなのを運命なんて呼んでたまるか。
「勘違いなさらないでください。息子に手を出さないと言う条件で最後に一度だけ、と仰るから来たんです」
「もちろん、約束は守るよ。あの頃の君は震えながらも一生懸命で可愛らしかった。だけど今の、洗練されて凛とした君も知りたくなってね。・・・もうそろそろかな」
ウイスキーが入ったグラスを口へ運びながら、長澤は腕時計をチラリと見る。
夏に手を出されるなんて冗談じゃない。
何故ならコイツは・・・
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