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緒方に、少し話したい、と言われ俺は個室を出た。
「お前達、そういう関係だったのか」
やべ・・・こんな関係世間に知れたら・・・
「俺が、柊さんを好きなんだよ!柊さんは悪くない!それに、手出してんのは俺の方だし!」
必死で弁解したいのに、取り繕う術を知らない俺はそれ以上の言葉が見つからない。
「ミナトが笑ってる顔なんて、初めて見たよ。負の感情しか無いやつだと思ってた。・・・だから俺は、ほっとけない、と思ったんだ。教師になって、この店に来る事がなくなってからもずっと、ミナトの事は気になってた」
ポン、と緒方の手が俺の頭の上に置かれる。
「お前の為なら笑えるんだな、ミナトは。誰にも言わないから安心しろ。俺だって人に言えない過去があるしな」
「緒方ありが・・・」
「あいつ、無事じゃなさそうだったな。・・・だから、礼は要らない。その代わり、これからはお前が守ってやれ。ミナトを笑顔にしてやってくれ。息子としてもな」
ニカッと笑う緒方の手は、大きくて温かくて、優しかった。「先に帰る」と言って緒方は店を出て行く。
俺は、大人は狡いって、残酷だって思ってた。
だけど、それだけじゃないのかもしれない。
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