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俺を護るためだって?
そんなの言い訳になんないだろ!
「偉かったですけど、俺は怒ってます」
「え、なんで・・・」
柊さんの両頬をぎゅっと摘んで左右に引っ張る。
「なちゅ、いひゃ・・・」
「簡単に俺以外に抱かれるような人は嫌いです」
柊さんの瞳が、戸惑ったように揺れる。
俺は摘んでいた彼の頬を両手で包んで親指で撫でる。
「柊さんが俺を護ってくれたみたいに、俺だって柊さんを護りたいんです。あなたが大切だから、自分の事も大事にして欲しい」
「自分を・・・?」
愛情を相手に伝えるのは難しい。
柊さんが相手だと、尚更そう感じる。
きっとそれは、俺にとってもこの人にとっても初めての事だから。
だからこそ、間違ってすれ違ってしまう。
「柊さん、もう俺の為に自分を犠牲にするのはやめてください。じゃないと心配で堪らなくて、俺死んじゃいますよ」
「それは、嫌だ」
「だったら、約束してください。何があっても、もう俺以外に体をひらかないって」
「そしたら夏は、死なない?」
柊さんの顔に「不安」と大きく書いてあるみたいだ。
この人が『死』に敏感なのを利用している俺は、卑怯なのかもしれない。
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