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「・・・はじめまして」
握り返すと、思ったより小さく冷たい。
「突然だけど、夏くん、キミを養子に迎えたいんだけど、考えてみてくれないかな?」
俺は6歳の時に両親を事故で亡くし、この養護施設で育ってきた。
ずっと育ててきてくれたシスターや施設の職員、一緒に育ってきた仲間たちに感謝はしているが、早く施設を出て自立したかった俺は、目の前に現れた見ず知らずの若い男の養子になることを選んだ。
高校入学に合わせて新生活を始めるため、彼と出会ってから一ヶ月もしないうちに施設を出ることになった。
柊さんは、国立の有名大学を卒業し、若くして事業を成功させ、三年ほどで一企業の社長になった、俗に言うエリート、というやつだった。
経済力もあり、人柄も良かったため、養子縁組までの時間は長くかからなかった。
未婚でイケメン、金も地位も持っている若い男が、なんで俺なんかを養子に迎えたのかはわからなかったが、早く施設を出たかった俺には好都合だった。
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