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再びタクシーに乗り、10分ほど走る。
あ・・・、ここってもしかして・・・。
タクシーは大きな墓地の前で停まった。
やっぱり・・・。俺の両親の墓がある場所だ。
柏木家、と彫られた墓にさっき買ったブーケを供え、手を合わせる柊さん。
それに倣って俺も手を合わせる。
何年ぶりに来たかもわからない。
だけど、墓石は綺麗に保たれているみたいだ。
「もしかして柊さん、時々・・・」
「命日とかに来れるわけじゃないから、時間がある時にね。ほんとに時々だよ」
目を閉じて手を合わせたままで柊さんが答える。
「ありがとうございます」
「お礼を言われる事じゃない。俺が悪いんだから・・・。こんな事しても許される訳じゃない。自己満足に過ぎないよ」
この人は、あの事故のせいで、どれだけ自分を責めて生きてきたんだろう。
「・・・そんなに長いこと手合わせて、何お参りしてるんですか?もう充分ですよ」
もう自分を責めないで欲しい。
「夏が選んだ花、気に入ってくれてるといいなーって。・・・・・・それと、夏が真っ当に生きていけるように見守ってくださいって。あとは・・・・・・・・・・・・夏に可愛い彼女ができますようにって」
なんだよそれ。
俺は柊さんが好きなのに。
俺は、最後のはシカトしていい、と墓石に向かって念を送る。
供えられた花は、あまりにも墓石には不釣り合いだった。
だけど、柊さんのように優しい色で・・・両親の代わりに俺を見守ってくれてるみたいに思えた。
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