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「道を踏み外す・・・?」
それってどういう・・・
言っている意味がよく分からなくて、思わず柊さんを見詰めた。
俺の視線に気付いた柊さんは、逃げるようして顔を背け、窓の外を見ながら話を続ける。
「普通の親子は、いくら男同士でもあんなことしない。俺のせいで、夏が同性愛者にでもなったら・・・ご両親に顔向けできないよ」
・・・同性愛者・・・道を踏み外すってそういう事?
柊さんを好きになる事は、罪って事?
胸が軋む音がする。
義理でも息子だからこそ、俺はこの人からの愛情をもらえてる。
それ以上でも、それ以下でもないんだ・・・。
「・・・わかりました。もうあんな事しません」
「よかった・・・。ありがとう。夏が素直な息子で本当に嬉しいよ」
背けられた顔が、こちらに向き直されて・・・ホッと安心したように、柊さんは顔を緩ませた。
素直、なんかじゃない。つまらない正論も聞きたくなんてない。だけど・・・
「俺は、柊さんの自慢の息子ですから」
シートの上に置かれた柊さんの手を握る。
「ははは。そうだな、俺が育てたわけじゃないけどな・・・夏は本当に素直でいい子だよ」
柊さんは振り解こうとはしない。握り返してもくれないけど。
それでもこの手は離したくない。
『結婚する気も、子供を作るつもりもない』
柊さんはそう言っていた。
たとえ心や体が手に入らなくても、この先も俺の為に生きてくれるなら、この人の人生は俺のものだ。
それで、いい。
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