来訪者

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・・・そんなに真っ当に生きて欲しいなら、俺は、柊さんの望む通りの息子になってあげますよ。 それが、俺の望む未来とは真逆だとしても。 柊さんが俺のために生きるなら、俺も柊さんのために生きます。 「来いよ、河森。・・・少し二人になりたいんで、部屋に行ってもいいですか?」 「ちょっと!引っ張んないでよ!」 河森の腕を引き、自分の寝室へ入る。 部屋の外から、万里さんの冷やかしが小さく聞こえた。 「夏くん!?なんでこんなことすんのよ!わたし、柊さんの方がタイプなんだけど!」 「しー。あんまうるさいと、口塞ぐぞ」 「なっ!・・・あんたほんっと最低」 河森は腕を組み、俺を睨みつけてくる。 「俺だってお前なんかと付き合いたくねーよ。柊さんのためだ」 「どういう事?」 「お前に言う必要ない。・・・でも、俺と付き合うフリしてれば、柊さんに会えるいい口実ができるんじゃねぇの?」 俺の提案に、河森は静かに考え込む。 そんなに簡単に会わせてやんねぇけどな。 「・・・いいよ、恋人ごっこ、のってあげる。けど、あくまでもフリだからね、わたしは柊さんがいいんだから。あ、エッチなことは無しだよ!キスもね!」 「わかってるよ」 誰がお前なんかとするかよ。 もしお前が柊さんに近付き過ぎる事があれば、その時は容赦しないけど。
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