囚われの羊

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いつもより4時間も早く帰宅して、玄関ドアを開ける。 玄関には柊さんのサイズより大きい革靴があった。 誰か来てんのかな? 廊下側から、ドアのガラス部分を覗いてリビングを見渡すけど、誰もいない。 おかしいな。 ドアを開けてリビングに入る。 やっぱり誰もいない・・・ 自分の部屋へ入ろうと思い、リビングの奥へ進む。 部屋に向かう途中、柊さんの部屋の前を通りかかったその時 「・・・あっ」 柊さんの部屋から聞こえた微かな声。 部屋に、いたのか・・・。 「あっ、・・・あ、・・・・・・んっ」 柊さんの声、だよな・・・。でもこれって・・・なんか、喘ぎ声、みたいな・・・。 聞いてはいけないと思いつつも、柊さんの部屋の前で止めた足が動かせない。 「あ・・・も・・・・・・したら・・・ああっ」 「湊、上に乗って」 「・・・ん・・・、んっ、あぁ・・・っ・・・・・・万里・・・」 柊さんの声が相手の名前を呼ぶのが聞こえて、今まで動かなかった足が、勝手にその場を離れてマンションの外へと走り出す。 嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。 柊さんと、万里さんが・・・。 いや、俺はあの時・・・万里さんと河森が家に来た時、確かに嫌な予感がしていた。 ふたりの関係に気付きたくなかっただけ。 結婚する気も、子供を持つつもりもないっていうのは、柊さんの相手が男だから。 柊さんのせいで俺が同性愛者になったら・・・、って言ったのは、自分がそうだからだったんだ。
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