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どこをどう彷徨ったかもわからないまま、気付けば俺は、自分が育ってきた施設の前にいた。
今更ここへ来たって、どうしようもないだろ・・・。
俺は施設の門に背を向けて歩き出す。
「もしかして夏?」
後ろから声を掛けられて振り返ると、施設長であるシスターが門の内側から、優しく微笑んで俺を見ていた。
「やっぱり夏だ。ついこの前お別れした時にはまだ子供だったのに、大人の顔をしているから、誰かと思ったわ」
「シスター・・・久しぶり」
「どうしたの?湊さんと喧嘩でもしたの?」
「そんなんじゃないよ」
ケンカなんかしてない。ケンカするほど、俺達は深い関係じゃないから。
「そう・・・。あなたの事が心配だけれど、湊さんの許可なくここへ入れる事はできないの。連絡しましょうか?」
「ううん。たまたま近くに来たから懐かしくて。もう帰るよ」
柊さんに連絡なんかされたら、困る。
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