囚われの羊

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狡い。 そんな風に俺を煽るなんて。 俺が何度も想像の中で求めた柊さんの姿が、こんな形で目の前にあるなんて。 柊さんの望んでいる素直でいい息子になるって、柊さんの家族でいようって決めたのに・・・。 「夏、湊のお願い、きいてあげなよ。キミに犯してほしいって言ってるんだ。そうだろ?」 耳元で囁く万里さんの声に、コクンと頷く柊さん。 俺を見つめる瞳に溜めた涙が、今にも零れ落ちそうだ。 薄汚い欲望が、俺の自制心を蝕んで行く。 ベッドの上の柊さんに向かって一歩、また一歩踏み出す足は、重くて仕方が無いのに・・・止める事ができない。 ギシッ、と乾いた音を立てて自分の膝がベッドに沈む。 もう俺の目には、万里さんの指に拡げられた柊さんの卑猥な秘部しか映らなくて、無意識のうちにボトムも下着も下げ、大きく開かれた柊さんの膝を掴んでいた。 「お行儀が悪い息子だな。ちゃんとコンドームはつけないと」 万里さんに手渡されたコンドームのパッケージを破り、自分に被せる。 「なつ・・・夏・・・っ」 柊さんの瞳から涙が零れた。 ・・・どういうつもりで俺の名前を呼んでるんですか? 求めてるんですか?・・・・・・それとも拒絶・・・?
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