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父の職場
電車で二駅、駅から歩いて10分程の所に柊さんの会社が入っているビルがあった。
オフィスは7階か・・・
エレベーターにのって、7階で降りる。
「柊さん、会社、着きました」
『待ってて、今開けるから』
入口がガラス張りになっていて、部屋の奥から柊さんが早足で来るのが見えた。
「夏、休日なのにごめんな」
「特に予定も無いんでだいじょぶですよ、はい、これ」
「助かった、ありがとう!」
封筒を渡すと、柊さんが俺の頭をぽんぽんと撫でる。
ぐ・・・またもガキ扱い。・・・撫でられんのは嬉しいけど・・・複雑だな。
「社長、すみません、俺のミスでご迷惑おかけして」
オフィスから若い男性が出てきて柊さんに頭を下げる。
「だいじょうぶだよ、平岡。俺も慌てて出てきちゃったから、資料忘れちゃったし、息子に持ってきてもらったんだ」
「ご家族にまでご迷惑おかけしてすみません!」
平岡さんは、俺にも頭を下げる。
「俺、暇なんで気にしないでください」
「よし、じゃあ、書類も揃ったし、行こうか」
「ほんとすみません!」
「一時間くらいで戻ってくると思うし、夏は中で待ってて。一緒に帰ろう」
「・・・はい」
柊さんと平岡さんをのせたエレベーターが閉まる。
働く男って感じでカッコイイな・・・「社長」なんて呼ばれてて・・・なんか・・・柊さんの存在が遠い。
はあ。俺なんかが好きになっていい人じゃないよな、きっと。
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