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贖罪
ずっと震えたままの柊さんを支えて、部屋に帰る。
柊さんの体が、冷たい。
「柊さん、風呂沸かすんで、体あっためてください」
「ごめん・・・夏」
俺は、柊さんをソファに座らせ、肩にブランケットをかけて、風呂のスイッチを入れに行く。
なんで、柊さんが謝るんだよ。柊さんだって被害者のはずなのに。
はっきり言って、両親の記憶も曖昧で顔もはっきりとは思い出せない。
事故のことも覚えていない。
柊さんを恨む気持ちはこれっぽっちも無い。
柊さんの横に座り、背中を撫でる。
「夏、本当にごめん。俺なんかに優しくしないでくれ」
「俺は、柊さんを恨んでませんよ。謝らないでください」
「・・・俺が、あの時、あいつから逃げたから・・・。あの時、逃げずに好きにさせていれば、夏の御両親は死なずにすんだ。俺のせいなんだよ。俺を責めてくれ、夏」
「・・・風呂そろそろ沸きます。とりあえず入ってください」
「・・・ごめん」
柊さんはジャケットを脱いでネクタイを外し、ベストのボタンに手をかけるが、震えた手がボタンを外せないでいる。
「失礼します」
俺は、柊さんのベストのボタンとワイシャツのボタンを外す。
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