囚われの羊

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囚われの羊

柊さんを安心させるために河森と恋人ごっこを始めてから1ヶ月。 毎週末、行きたくもない河森とのデートに出掛けている。 お互い好きでもない相手とのデート。 昼から出掛けて、ネットカフェの別々の個室で時間を潰して、一緒に夕飯を食べてから帰る。 デート、のフリ。 河森は、柊さんに会いたいと言って家に来たがるけど、俺は、なんだかんだ理由をつけて断っている。 今日も河森との嘘デートのために、出掛けなければならない。 「夏、千里ちゃんとデート?すっかり息子盗られちゃったなぁ」 玄関で靴を履く俺を見て、「盗られた」と言いながらも柊さんは嬉しそうに笑う。 「あんまり遅くなって、千里ちゃんの御両親に心配かけるなよ?」 「はい。いつも通り、夕飯食ったら帰ってきます。いってきます」 「ああ。気を付けてな」 送り出してくれる柊さんの笑顔が・・・俺には何よりもつらい。 柊さんが、行くなって言ってくれたら・・・。俺が河森と何をしてるのか、少しでも気にしてくれたなら・・・。 俺の淡い期待は、いつも打ち砕かれてしまう。
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