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「自分を許す・・?」
「ジョウ、おまえは、誇りと傲慢を履き違えている」
「な・・」
「ルーナも高慢かもしれないが、おまえも、ただの鼻持ちならない傲慢野郎なんだよ」
「鼻持ちならない傲慢野郎・・僕が?」
「そうだ。わからんかな。そんなことでは、近く現れる新たな幻魔に簡単にやられてしまうぞ」
「また、幻魔が現れるのか」
「まあ、いろいろあってな、現れるのだよ、”やつ”がな」
「”やつ”?」
「だから、悪いことは言わない、その前に、おとなしく、わしの手下にならんか」
「いやだ。誰が幻魔の手下なんかになるものか」
「ふん、頑固者め。ま、頑固と傲慢は、似たようなものかも知れんが。それが、おまえを救うのかもな。覚えておけ、ルーナは、この世界の、やつに勝っている。おめおめ、しかもその一匹に負けたら、死んだルーナに申し訳がたたんぞ」
「うむ」
「恋する思いは、まあ、各自、それぞれなのだろうが、それに執着するのも、いわば、呪いのようなものだ。ルーナも、そんなことは望んでおるまい。おまえさんはおまえさんで、その上で幸せになることを考えるがいいさ。それが、生き残ったものの権利であり義務だ」
「幸せになるのは、生き残ったものの義務・・」
「なんだ、その驚いたような顔は。あいては、まあ、難癖をつけて喧嘩を売ってくる、ヤクザのようなものだ。相手にしなければ、喧嘩にはならん。喧嘩にならなければ、きゃつらも調子が狂う。調子が狂えば、こっちの漬け込む隙ができるというもの」
「・・・」
「頼りないおまえさんが、きゃつに勝つこと、それがルーナへの最高の手向けになるのだろうな。せいぜい、がんばって、幸せになるんだな。あ、ジョウ、知っているか」
「ん、なにがだ、ドク?」
「じゃあ、教えておこう。家庭を持て、ジョウ。幻魔ってやつはな、普通の幸せってのが大の苦手なんだよ」ドクは指の葉巻を振り回しながら言った。
しかし、それに火はついていなかった。
もしかしたら、ドクも禁煙を始めたのかもしれない
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