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「そうだ、正気の沙汰ではないが、しかし、プリンセスは、それをやり遂げ、挙句に、だれに賞賛されることもなく、ただの愚かなアル中女として命を落とすことを選択した」
「ドク!」
「そうだ、ジョウ、おまえさんがあのDC-8で相手した幻魔さたんなんて、プリンセスが対峙した七匹の幻魔に比べれば、いたちの最後っ屁の残り香のようなものに過ぎないのだ。それが、わかっているのか、三流エスパー、それでよく”真の救世主”だなんて、いきがっておられるな。そうだ、彼女こそ”真の救世主”なのだ」
「誰も、誰も・・僕は”真の救世主”だなんて、名乗っていないし。もう、超能力者は、廃業したんだ。もう、二度と超能力は使わない・・」東丈は、食いしばった歯の間から耐えるようにその言葉を発した。
「だから?冗談はヨシコさんだぞ」
「ドク」
「おまえは、恐れた。命がけで七匹、何匹でもいい、幻魔と戦うなんてご免蒙ると、戦線離脱を勝手にもくろんだのだ。なにしろ、おまえの前世とやらは、その昔、やってきたヘナチョコ幻魔一匹相手に、簡単にその軍門に下ってしまったのだからな。だから、プライドだけは人一倍高いおまえは、あの遭難事件の真相を、簡単に忘れたのだ」
「う・・ぬ」
「それをなんというか知っているか?」
「・・・」
「そうだ、敵前逃亡という。卑怯者め、どうだ、東丈、そんな卑怯者は幻魔こそ、ふさわしい。だから、悪いことはいわん、幻魔になれ」
「誰が、なるか、そんなモノに」
「で、どうするのだ、そうやって壮絶な最期を遂げたプリンセスに操を立てて、死ぬまで独身で通すつもりか。なかなか、けなげだな。阿呆な日本人の考えそうなことだ。そうやって、”なんてマジメな自分だろうか”と、自己陶酔に酔うのだな。くだらん、まったく、くだらん」
「何とでも言え。僕は・・僕は本当に、あのプリンセスを愛していた。そうだよ、僕は、あのプリンセスが大好きなんだ、悪いか。高慢なのも、プリンセスの専売特許ってモノじゃないか。白人至上主義だって、そういう国で育ったのだもの仕方がない。そして、そんな彼女が、僕なんかを、愛してくれたんだ。なあ、ドク」
「ん?」
「ドク、僕はどうしたらいいんだ?」
「さあな、自分で考えろ、ボケ」
「うむ」
「・・といいたいところだが」
「む・・」
「この世界には、ルーナはいないのだ。死んだのだ。諦めろ。そして、自分を許してやれ」
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