優れた嗅覚

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 その日は、初めて研究所の外でこの薬を服用して外出した。サトシは恋人と一緒にオシャレなイタリアンレストランへ向かった。レストランへ向かう道中、恋人の長い髪から香るシャンプーの淡い匂いがサトシの鼻をくすぐらせた。薬は研究所の外でも効果は存分に発揮してくれた。  レストランに到着し、個室に案内されると、ラブラブな二人はとなり合って座った。落ち着いた雰囲気のレストランでは鼻が利く分いつも以上に食事を堪能できた。赤ワインの熟成された香りは芸術的にも感じられ、トマトパスタは甘酸っぱいトマトとほのかな苦みを放つバジルが料理を際立たせてくれた。 「今日はなんだかいつもよりおいしそうに食べるわね。」 「まあね、このデザートのシチリア産レモンシャーベットなんて最高の香りだね。」 「あら、鼻に近づけなくても分かるの?」 「実は嗅覚を高める薬が開発できて、今日それを試してるんだ。」 サトシがそういうと、恋人の顔が急に赤くなってきたように思えた。 やがて、二人きりの個室の空間から悪臭が漂い、サトシの鼻を刺激した。 「もしかして、オナラした?」 恋人は、恥ずかしそうにコクっとうなずいた。
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