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御使い
そこは終末医療専門の病院だ。
誰も訪ねてくる事もなく、ただ死を待つだけの人たちが、最後の時を心安らか過ごす場所だ。冥界に旅立つその時まで、サポートをする病院なのだ。
1人の女性が運び込まれた。
身寄りのない女性。女性というには幼い。少女と言ってもいい年齢だ。
「先生」
「もって1ヶ月と言われている」
「でも、なんでここに?」
看護師が不思議に思うのも当然だ。
ここは救いのない病院。少女が最後を迎えるのに相応しいとは思えない。
「彼女の希望だ」
「え?」
「彼女は、とある事件の被害者の家族で、唯一の生き残りで、マスコミがまだ追っている」
「それで・・・」
「それに、彼女は残された遺産を全部この病院と隣接する孤児院に寄付すると言っている」
「孤児院の事も知っているのですか?」
「そうだ。なぜ知っているのかは教えてくれなかったけどな」
「そうなのですね。不思議ですね」
医師と看護師が不思議がるのも当然なのだ。
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