506人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
月日は流れ一緒に住み始めて一年ちょっと経ち、もうすぐ初めての結婚記念日を迎えようとしていた頃だった。
年度が変わったばかりのある夜の会話。
「今日ね、新入社員が配属になったんだよ」
「へー、そうなんだ。どんな子?」
「おとなしそうな男の子だよ。なんかねー、反応ひとつひとつが初々しくてかわいいの!」
「ふーん」
緊張し過ぎてガチガチになってた新卒の渡辺くん。
誰が何を話しかけても「はい」「ありがとうございます」ばかり。
一度、「かしこまりました」なんて返事をして「社内の人には“わかりました”で大丈夫だよ」に続いて “かわいい〜” とある女性社員が小声で言ったのが聞こえたらしく、顔を真っ赤にして俯いていた。
そんな様子を見て、そうちゃんもよく年上の女性社員にいろいろ言われて同じように真っ赤な顔をして俯いてたなぁと懐かしくなった。
「そうちゃんも新卒の頃はあんな感じだったんだろうなー」
「オレ、そんなんじゃなかったし!
それよりウチの隣の課にも新卒の女の子が配属になってさー。かわいい子だよ、初々しくて」
何故かムキになって言い返してきた。
そうちゃん……何で張り合う?
「そうなんだー。かわいい子でよかったね!でも同じ課じゃなくて残念だね〜」
「ウチの課は男ばっかりだからなー。でも同じ課に女の子がいたら心配でしょ?」
ご飯を頬張りながらちらっと私を見る。しかもドヤ顔。
その変な自信というか当然と言いたげな表情は何だろう。
「何で?別に心配なんてしないよ?」
「えっ?!ヤキモチ妬いたりとかしないの?」
「どうしてヤキモチ妬くの?
何?そうちゃん。女の子がいたら私がヤキモチ妬くような事をするの?」
「しないけどさー…妬いてくれないんだ……」
そうちゃんはがっくりと肩を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!