赤ちゃん

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赤ちゃん

結婚生活は『あること』を除けば順調だった。 そんな中、とある事情で田中さんに会うことになった。 田中さんに会うのは退職以来。 今さらあの時の話なんてする訳はないけれど、そうちゃんが一緒だったこともあって “あの事はそうちゃんにバレませんように…” と、ムダにドキドキ。 田中さんは私たちが結婚した後に結婚。そしてパパになっていた。 「アヤちゃん久しぶり!」 元気そうな田中さん。 「田中さん、パパになったんですよね。おめでとうございます!」 「そうなんだよー」 赤ちゃんの話を出したら、急に田中さんの目尻が下がった。 「男の子ですか?女の子ですか?」 「女の子だよ。ちょっと待ってて、今連れてくるから」 そう言って田中さんが抱っこして連れてきた赤ちゃんは、お人形さんみたいに目がクリクリしていてかわいかった。 「うわぁかわいい!パパ似ですねー」 「でしょ?もうかわいくてかわいくて!」 赤ちゃんに頬ずりする田中さんの顔は、とろけそうなくらいニコニコになった。 「田中さんメロメロですねー。イメージ崩壊ですよ」 お互いに歳を重ね、昔のように対立することもなくなったそうちゃんが田中さんをからかう。 「桜井だって子どもが生まれたらこうなるよ。いやぁ〜まさか子どもがこんなにかわいいとは思わなかったよ」 田中さんはそこからいかに我が子がかわいいのかを語り始めた。 仕事と女性のことしか頭になさそうだった田中さんの口からこんな言葉が…と驚いていると、赤ちゃんが泣き出した。 「…ん?なに?どうしたの?あ!オムツかなー。じゃあキレイキレイしよーね。 じゃ、ちょっとオムツ替えてくるわー」 パパが替えるからねー、と赤ちゃんに話しかけながら立ち去った。 あの田中さんがオムツを替える姿なんて全く想像できない。
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