妊娠生活

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帰宅後ソファーに並んで座り、早速さっきの健診の話になった。 「この中にさっき見た子がいるんだよね…」 そうちゃんはまだペタンコなお腹を愛おしそうに撫でる。 その姿に胸がジーンと熱くなった。 「不思議?」 「だってお腹の中にもう一つ命があるわけでしょ?小さい身体で一生懸命心臓を動かしてるんだもんなぁ。なんか神秘的だよね」 「本当に感動したんだね」 「あれを見たら感動するでしょー。あんな風に心臓を動かしてるなんてちょっと想像もつかなかったなー。頑張って大きくなろうとしてるんだよね。見せてもらってよかった〜」 「じゃあ今日は年休取ってまで病院に行ってよかったね」 「ほんとそう。オレ、今日の事は一生忘れないと思う。 ねーアヤちゃん、大切に育てていこうね」 「うん、やっと私たちのところに来てくれた赤ちゃんだもんね」 「そうだね。赤ちゃんに感謝だね」 そうちゃんはまたお腹を撫でながら「ありがとう」と赤ちゃんに語りかけた。 「そうちゃんにも感謝してるよ。ありがとね」 「そんな……オレの方こそ感謝してるよ」 感謝を伝え合っているはずなのに、二人揃ってなんとなくしんみりとしてしまう。 それはお互いに口には出さないけれど、それは妊活を巡っていろいろあったことを思っての言葉だからだと思う。少なくとも私はそのつもり。 あの時そうちゃんが私の元から逃げ出していたら、そしてあのままレスが解消できなかったら、間違いなくこの幸せは訪れなかった。 だから私は、それに対する“ありがとう” そうちゃんの言う“感謝” は、どういう思いを込めてくれてるのかな。 まだあの頃の事に触れる勇気はないけれど、いつか「あの時は大変だったね」と笑って話せる日が来て欲しいと思う。 そして、その健診でようやく実感が湧いたそうちゃん。 私がちょっとでも動こうものなら 「いいから座ってて!」 「お願いだからおとなしくしてて!」 元々、妊娠してからも仕事を続けていた私の体調を気遣ってくれてはいたけど、急に過保護になり、口うるさくなった。 相変わらず仕事が忙しく残業続きなそうちゃんだったけど、できる範囲で家事もしてくれた。 せめて食事の準備だけでもしようと思ったけれど、つわりの軽かった私が唯一ダメだったのが食べ物の匂い。 結局料理どころか部屋の中で匂いのするものを食べる事にも耐えられず、しばらくの間、そうちゃんは外食を余儀なくされた。 そしてやる事のほとんどない私は、すっかりぐーたらな妊婦になった。
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