8人が本棚に入れています
本棚に追加
それってズルくない…
俺って、彼女の仕掛けた恋愛ゲームにまんまと嵌っちゃったのかもしれないけれど…、いつかかってくるかわからない彼女の電話の虜になっていた。
「私、なんか大野君のこと好きになっちゃったかもって言ったらどうする?」
毎年開かれる同期会も今年で3回目。大卒ばかりの同期は、全員今年で25歳になる。それぞれ次第に仕事が忙しくなっているせいだろうか、今年の参加者は12名だった。その二次会の席で、偶然隣に座った立花梨華に突然耳元で囁かれ、大野純一は戸惑った。
同期といっても25人いるので、全員と深く付き合っているわけではない。立花梨華について純一が知っているのは、新入社員研修の際、講師役の人事部長に結構鋭い質問をしていたり、グループ研修の際もリーダー役を自ら買って出ている姿だった。なので、きっとやる気が高い子なんだろうなという感想は持っていた。でも、純一にとってはそれ以上でも、それ以下でもなかった。
それなのに、酔いに任せて(?)、本気とも、そうじゃないともとれる発言を突然耳元に向けられたことで、純一はとたんに立花梨華を一人の異性として意識してしまったのだ。
『そんなのあり?』
「どうするって言われても、突然だし、それに立花さん相当酔っているしね」
梨華の目はすでにトロンとしていて、今放った言葉だって、きっと明日には忘れてる。だから、うかつに乗ってはいけないのだ。
「ふ~ん。確かにアタシは今酔っぱらっています。でも…」
そこまで言ったかと思ったら急に声を詰まらせて泣き出した。
『泣き上戸かよ』
すると周りが騒ぎ出した。
最初のコメントを投稿しよう!