不純な動機の上で

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不純な動機の上で

彼は寝不足だった。ただ、それだけ。たったそれだけの事なのに。 「おい、霙」 「あ? 何だよ」 「うぜぇから、それ。止めろや」 親友の睨みも、然程の効果は無く。止まらない貧乏揺すり。 空吾から、深い溜め息が滴る。親友だからこそ、推察は外れを見ない。寝不足が祟ると、苛立ちが表面化する。霙の悪い癖だ。 「ただでさえ短い睡眠時間……、一体何に削ってんだか」 嫌味なようで、心配を主張した一言に霙の足がぴたりと止まる。不愉快を露にした表情。舌打ち後にむすっと噤まれた口。 どうやら彼は、簡単に口を割る気はないらしい。 「黙りかよ?」 「お前に関係ねぇだろ」 「ある」 「何があるって?」 緑と銀の視線がぶつかり、睨み合う。 普段は気の長い霙も、今日ばかりは違う。物言わぬ顔で、自分を睨める親友が気に食わない。思い切り掴んだ胸ぐら。 弱点と言っても過言ではない睡眠不足が彼をそうさせる。だが、長年親友をやる空吾にとって、こんな八つ当たりは慣れたこと。まだ、自分に向かってくるならマシな方だ。他に……、聿志や白夜に向かわれては困る、と。驚く様子は全く無い。 「寝ろ」 「歯飛ばされてぇか?」 「寝るまで此処から出るな」 唯唯、平然としてる空吾が気に食わない。いつもなら気にならないものでも、今日は違う。頭が回らない上、無駄に血が滾る。殴りかかろうとした、刹那。銃口が霙の額を睨んだ。 「もう一度だ。寝ろ。うぜぇ」 「子守唄にドラムは要らねぇだろうが」 「そんなもんあるかよ。寝ねぇなら一生おねんねしてろって事だ。勘違いすんな」 大きな舌打ちと共に、ソファーに勢い良く寝転がる。そんな霙を見、彼は安堵の溜め息をつき、拳銃を胸に仕舞った。 大きな欠伸が緊迫していた空気を和らげる。
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