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(やっと寝やがったか……)
親友の平和な寝顔に、らしくもない微笑を浮かべる。
そんな時、不意に響いたノック音。
「あー?」
「空吾……、私。白夜」
「入れ。静かにな」
「う、うん……?」
恐る恐る開かれたドア。面倒くさそうな視線に戦きながら、白夜が入室してくる。勿論、音を立てぬように抜き足、差し足、忍び足でだ。
「あ……」
そうして、青い視線は一直線に霙へと伸びて行った。あどけない寝顔に、白夜もまた微笑みを浮かべて。
「珍しいね。霙さんがこんな時間に寝てるなんて」
「お前のせいで寝不足なんだとよ」
「え? どういう事?」
「膝枕なんて下らねぇ事させてんじゃねぇ、気持ち悪ィ」
「下らないって……」
困ったように苦笑する白夜に、呆れる。数十秒の沈黙。
空吾の手がテーブルのオイルライターに伸びる。
そうして、それを手に取りベッドに向かったのだった。
「何それ?」
「アロマキャンドル」
ゆらゆらと燻り始めた香りに、白夜の顔が歪む。
そんなの気にも留めずに、空吾はベッドに寝転び目を瞑る。
「寝るの?」
「寝ねぇよ。お前こそ、何の用だ?」
「あぁ……別に。何もないよ」
へにゃり、親友と瓜二つな顔をしているのに雰囲気は似ても似つかない笑顔を見せて。
すたすたとベッドに向かって来ては、我が物顔でベッドに、隣に寝転ぶ彼女に、空吾の顔が歪んだ。
「寝るなら霙の所に行け」
「起きちゃうし、何より寝れないよね」
「なら、部屋にーー」
ぷに。唇を押し潰した人差し指。
睨めるような視線の先、彼女は「しーっ」と、子供じみた表情で笑って。
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