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「あーあっ……白夜の膝は、霙の特等席だったと思ったのになぁ」
「……起きてたんですね、やっぱり」
気配を消して、自分に近付く彼はやっぱり侮れない、と。漏れた溜め息。空吾の額を撫でれば、背後から神妙に抱き着かれ、彼女は息を殺す。いつものようにあしらおうにも、空吾を起こしてしまっては、と、声すらも殺した。
「焼きもち焦げるよ?」
「ふふっ、真っ黒になっちゃいますか」
「消し炭になる気はないけどね」
指で撫でられる頬に、妙な心地良さを感じつつ。彼女は霙の肩に頭を預けて。露になった首元に、指が移動する。
そしてまた、擦られるように撫でられるそこに、擽ったさを隠せず。
「絞めないで下さいね、首」
「空吾に現抜かしてたら、解んない」
「そんな動機で、殺されたくないです」
「霙、空吾は殺せないからさ」
「私は殺せると?」
「殺せるよ」
“だって、それは自殺するのと何ら変わらない事だから。”
残酷な台詞を甘く囁くように吐くのだから、堪ったもんじゃない。けれど、そんな重苦しい程の想いが、此処に確かに存在する優しさが、彼女の支柱になっているのもまた、否定出来ない事実。
不純な動機の上、織り成された時間は止まる事を忘れてしまったようだ。
……END……
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