不純な動機の上で

6/6
前へ
/9ページ
次へ
「あーあっ……白夜の膝は、霙の特等席だったと思ったのになぁ」 「……起きてたんですね、やっぱり」 気配を消して、自分に近付く彼はやっぱり侮れない、と。漏れた溜め息。空吾の額を撫でれば、背後から神妙に抱き着かれ、彼女は息を殺す。いつものようにあしらおうにも、空吾を起こしてしまっては、と、声すらも殺した。 「焼きもち焦げるよ?」 「ふふっ、真っ黒になっちゃいますか」 「消し炭になる気はないけどね」 指で撫でられる頬に、妙な心地良さを感じつつ。彼女は霙の肩に頭を預けて。露になった首元に、指が移動する。 そしてまた、擦られるように撫でられるそこに、擽ったさを隠せず。 「絞めないで下さいね、首」 「空吾に現抜かしてたら、解んない」 「そんな動機で、殺されたくないです」 「霙、空吾は殺せないからさ」 「私は殺せると?」 「殺せるよ」 “だって、それは自殺するのと何ら変わらない事だから。” 残酷な台詞を甘く囁くように吐くのだから、堪ったもんじゃない。けれど、そんな重苦しい程の想いが、此処に確かに存在する優しさが、彼女の支柱になっているのもまた、否定出来ない事実。 不純な動機の上、織り成された時間は止まる事を忘れてしまったようだ。 ……END……
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加