20.幸福のかたち

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演技力があるがために、苛烈な役も多い紗夜だが、もっと優しい役も今後はまり役として出てくるのかもしれない。 城戸はそう思っていた。 たとえ現場が辛くても、家に帰ればほっと安心できる、というのは大きいことだと感じる。 芸能界というのは、生き残っていくのが厳しい世界だ。 ひとつのイメージに囚われることも、望ましくないとされる中で、紗夜は今後いろんな経験をして、ますます演技に深みが出ていくのだろうと思うとそれも楽しみだ。 良かった…と城戸は心から思っているのだ。 日当たりの良いリビングダイニング。 先程からダイニングテーブルに、ホットプレートを置いてパンケーキを作っている。 まるでお店で作ったもののように、綺麗に表面がつるっとしていて、ふんわりと膨らむパンケーキに紗夜は釘付けになっていた。 「かけるのもいろいろあるぞ、えーっと、メイプルシロップ、シュガーバター、シナモン、チョコシロップ、ホイップクリームにアイスクリーム…あとフルーツ。」 クリームチーズ…あったかな…そんなことを言いながら、紗夜の頼れる彼は冷蔵庫から、どんどん色んなものを出してくれる。 「えー?何にしようかなぁ…みんな美味しそう。」 「まあ、そうだな…。」 辻堂は大きな皿に、先程羅列した全部を、少しずつ飾って盛り付けした。 「パンケーキはナイフとフォークで小さくして、ちょっとずつ付けて食べるのは?」 「わーん、幸せ過ぎるよー、絢人さーん!」 小さく切ったパンケーキに、お皿の上のホイップクリームとメープルシロップを付けて、辻堂は、紗夜の口に入れる。 あーん、とそれを紗夜も抵抗することなく、嬉しそうに口に入れた。 「美味しーっ。」 「果物も取れよ。」 「うん。バナナにチョコつけたら美味しそう。」 「屋台にそういうの、あるな。」 「屋台?」
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